キャラクターの配色を昭和テイストに落とし込む – 1/35でメカトロウィーゴをつくる: 1

今年の春先から、東京・秋葉原の貸工作スペース「秋葉原工作室」 (@akihabarakousak) さん主催の「メカトロウィーゴ工作会」なるイベントに時折参加して、メカトロウィーゴを作っている。

自分で課したルールはふたつ。本体を切った貼ったしないこと。そして、「戦闘用」は禁じ手とすること。


ふたつの掟には理由があって、ひとつめの方は、本体を改造してしまうと、私の気質的に「新造要素ばかりで、ウィーゴ使った意味がネェ!」となりかねない為。
もうひとつの方は、ウィーゴ本来の世界観設定では通学用であり、メカトロウィーゴ、と云うキャラクター性を活かして遊ぶとき「戦闘用ではない」と云う性格付けは欠かすべかざるものである、と感じた為。
ぶっちゃけ、このシルエットで戦闘用ネタやるなら、Ma. Kの方が色々向いている気がする。

おヒゲのウィーゴ

それらを踏まえて考えた最初のウィーゴは、ターンエーウィーゴ、である。

ターンエーウィーゴ ターンエーターン。

いきなり兵器じゃねぇか、記憶力0かよ! 鳥かよ!! と云うなかれ。
あくまでこのターンエーはムーンレイスと戦う方のそれではなく、牛を運ぶ方のそれなので、月光蝶は使えないが手首をぐるぐる回して簡易洗濯機にはなるかもしれない。
ここまででついて来れなくなった人はターンエーガンダムを視よう、面白いぞ。

前述のとおり、本体は無改造なので配色について。
配色は劇中のそれではなく、有名なシド・ミードのコンセプト画に描かれた胸に白十字のもの。胸前面のパネルラインを胸部に見立て、あとは要所要所に赤とメカ色を足していく。

昭和の工業製品な配色、を考える

メカトロウィーゴの世界観のもうひとつの重要な要素として、昭和中期っぽさ、と云うのがある。
最近はコンクリート・レボルティオなんかがまさにそんな感じだが、カラフルでポップでキッチュな昭和感、て奴だね。
配色のパターン自体はターンエーガンダムを当てはめるが、個々の色は劇中のそれではなく、そう云った昭和ポップ感を意識した色合いに振っていく。

ネタ出しはとにかくグーグル画像検索。「昭和40年代 家電 色」とか「1960年代 車」とか、なんとなく同時代っぽいメカの画像が引っ掛かりそうなキーワードで片っ端から検索する。
この時、リンク先はほとんど見ない検索結果に出てくるサムネイルの群れを俯瞰して特徴を拾うようにすると、特定コンテンツのバイアスを受けにくい。

画像検索の一例画像検索の結果の一例で、「昭和 レトロ家電」の検索結果。この結果からはアイボリー、濃赤、茶色が頻出色である事が伺える。

今回、そこから導き出した昭和の工業製品ぽい色は以下の通り。
まず基本色となる白はアイボリーホワイト。

本体 5Y 9/1 グリーンマックス 鉄道カラー
37 白3号
+
GSIクレオス Mr. カラー
C21 ミドルストーン

純白より多用されていたのは、恐らく今の塗料ほど耐候性が良くなかった分、褪色を目立たせないためだろうか。
自動車から家電まで幅広く使われており、私の中ではザ・20世紀と云う色調である。
何色か塗料を買ってみたが、気に入った白が無かったため、原色白+ミドルストーンの自家調合のアイボリー。我ながら良い色ができたと思うので、おすすめだ。

次に、靴底や脇腹の赤は暗めのワインレッド。この色は海外でも人気だったようで、輸入車や輸入家電でも見かける色。
現在よく使われる、やや紫みの澄んだワインカラーではなく、茶色っぽく濁った色で、あずき色、と云うのがしっくりくる。

アクセント色 2.5R 3/8 グリーンマックス 鉄道カラー
26 マルーンA

メカ色は薄めのグリーン。元ネタのメカ色はただのグレーだが、昭和のメカ色と云えば、このうぐいす色。

メカ色 10GY 7/4 ガイアノーツボトムズカラー
AT-02 ライトグリーン

昔は電話機からバス、工業機械まで幅広く使われていて、とてもメカっぽい色だと思う。
ガイアノーツから出ているボトムズカラーのライトグリーンが、まさにそんな昭和グリーンで、あまりに気に入ったので、後日、似た色のキッチン秤を買ってしまった ()

キッチン秤 デザインも古めかしくて可愛い。

そして青。元ネタではインディブルー100%、と云った感じの濃い青だが、鮮やかめのスカイブルーに変更。実のところ、前述のイメージ検索ではもっと淡いターコイズ調の青が昭和っぽいのだが、色見本を組み合わせてみるとガンダム感が全くなくなってしまったので、他の色とのバランスから導き出している。

10B 5/10 GSIクレオス Mr. カラー 新蓋
C34 スカイブルー

他の3色はいずれも純色に比べてやや黄色みを帯びた色で、それらと組み合わせるとき紫寄りの青だとそこだけ浮いてしまう。そして、赤が比較的重い色なので対となる青は明るめに振らないと重厚な印象になってしまうのだ。
故に、ここは迷わずスカイブルーに変更、と決めた。胸の白十字だけは、アイボリーではない、純白。これを本体アイボリーにしてしまうと、十字が本体に溶け込み、十字ではなく「田の字」に見えてしまうのだ。

アクセント色の使い方による見え方の変化
右は画像加工で白十字をアイボリーにしたもの。青い部分をひとかたまりに見せるためには、本体と同色では駄目なのだ。

最後に、おヒゲは元ネタだと白いのだが、ここは下手にパーツを足すより塗りの方がキッチュな感じで絶対可愛い、と直感したので黒塗装。これを思いついたとき、ひとつ目の掟でウィーゴを作っていこうと決めた。
生の黒ではなく、やや屋外で褪せた感じを出すためにMe. カラーのRLM 70 ブラックグリーンを使用。
この色、パッと見は黒だけど光の加減で緑に見えたりオリーブドラブっぽく見えたりして、普通の黒だとどきついな、と云う時に本当に使いやすい。

ヒゲ 10GY 2.5/2 GSIクレオス Mr. カラー 新蓋
C18 RLM 70 ブラックグリーン

汚しは、泥汚れと錆をやや強めに。長年使われて塗装は傷んでるけど大事に手入れされてるのでサビサビにはならず、牧草地を歩くので足元だけ集中的に土埃をかぶる、とか、そんな想定。
1/35のメカなんて塗るのは20年ぶりくらいなので、錆の流れ方などは出かけた時に建物や看板を観察してイチから勉強しなおした。
アルコール落としとか最新の技法を勉強する暇が無かったので、由緒正しく (?) エナメル塗料の手書きと拭き取り、ドライブラシで汚している。

アクセント色の使い方による見え方の変化
腕のあたりが判りやすいが、鉄製品は剥げたところは黒くサビ、そこから鮮やかなオレンジ色になって流れてゆく。


さて、冒頭からちょくちょく触れているように、ターンエーと云えば牛。
当然 (?) 牛も合わせて作っているのだが、長くなってしまったのでひとまずここで一区切り。牛篇は次回で。

牛とウィーゴ
ローラの牛、である。

「キャラクターの配色を昭和テイストに落とし込む – 1/35でメカトロウィーゴをつくる: 1」への2件のフィードバック

  1. こんにちは由良之助です。
    フネに限らず乗りものなら何でもござれの私ですがSFメカはどうも苦手(本当に動くとは思えず実在感を感じられない)であります。しかし、このメカトロウィーゴにはやられました。
    機体を「戦後昭和の量産工業製品(=非兵器)」と想定し、それに基づいて色彩設定をするのみで実在感をもたらすのですから『色彩の魔術師(←私が勝手に付けた春園燕雀様の尊称)』の面目躍如で、まさに脱帽です。

    たしかに私の家に40年以上前から鎮座しているナショナル扇風機を思わせる配色ではありますが、他の工業製品もホンダスーパーカブ・F86のブルーインパルス・羊蹄丸・タバコのハイライト(封紙も薄緑色ですし)・・・と、連想することはできます。薄緑色というのも産業機械性(?)を表す重要な要素で、機械に詳しいひとならおおいに頷首するところでしょう。

    昭和的色彩というと鉄道模型専用塗料(マッハ模型や日光モデル)は昭和テイスト全開の色が選び放題に揃っていますがHOスケールの金属車体用(ラッカー)なので、①プラモに使うにはひと工夫が必要②20センチ以下の模型で使うには量が多すぎ③取扱い店が限られる(秋葉原界隈ではModelsIMON秋葉原店くらい?)という難点があります。その点グリーンマックスカラーとダグラムカラーに目をつけられたのは流石で、たしかにそれらしい色が揃っています(今度出るダグラムカラーの新色もなかなか良さそうです)。

    「牛を塗る」編も拝見しました。牛のウェザリング記事というのは前代未聞なのではなかろうかということで、こちらも脱帽であります。

    1. 由良之助さま
      返信遅れまして申し訳ありません、いつも感想ありがとうございます。
      魔術師、は流石に過分かと思いますが、色彩への興味とコダワリは大いにあるので、そこを見て頂けるのは嬉しいです。
      今回挙げた以外にも、同じくガイアノーツのバーチャロンカラーもアイボリー系のラインナップが豊富だったりと、各社の特色系は本来の用途以外で以外に使える色が多くて、中々重宝しています。
      今回の牛などはまさにそうですが、「好きなモノを作る」だけでなく「作ることで理解が深まり、興味や愛着が湧く」と云うのは模型ならではの愉しみだと思います。
      ハセガワのウィーゴは中々良い出来で、初めてプラモを作ると云う人が4時間で塗装まで進んでいました。
      ここはひとつ、由良之助さんもSFメカへの扉として、ウィーゴを1体拵えてみては如何でしょうか。
      実在感の無いものに、どうやって実在感を持たせるか、と知恵を巡らせるのは、スケールモデルとはまた違った面白みがありますよ。

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