お座りさせて、化粧する – 1/35でメカトロウィーゴをつくる: 6

お稲荷ィーゴもいよいよラスト。今回はウィーゴ本体である。
丸いウィーゴをどうやってお狐様に見せるか、ポイントは、狐らしい座り方とアイメイク。


今まで、基本的に本体は無改造で合わせ目消しとフチを薄く削るだけにとどめてきたのだが、今回は犬座りさせるために膝裏を現物合わせで削り込み、太腿と脛裏が密着するように加工している。
キットのままでも一応座らせて手をつくことができるが、足裏を前に投げ出した感じになってしまい、イマイチ狐っぽい座りに見えないのだ。

1/35メカトロウィーゴを犬座りさせる
丁度太腿中ほどのモールドのあたりから下を削る。

稲荷の狐が咥えているものにも色々あるが、今回は伏見稲荷のそれを参考に向かって左に鉤、右に玉を咥えさせてみた。

稲荷狐の咥える「鍵」と「珠」
たぶん、日本で一番有名な稲荷狐、伏見稲荷の入り口付近の狐。このつがいは玉と鉤だが、他に巻物や稲穂を咥えた者も居る。

鉤はオーソドックスなブラ棒細工で、柄の端の房は0.2mm銅線を用いた。

稲荷狐の鍵
伏見稲荷の狐の房は中間に飾り結びが入るが、難しいので割愛

玉は表面にオーロラ風コートの入ったビー玉で、これはウィーゴの口に挟むだけでは安定しないので、見えなくなる位置で太いプラパイプをエポキシ系接着剤で固定し、パイプ部分をウィーゴの腹部分に落とし込むことで転落を防いでいる。

稲荷狐の珠
ビー玉の支え部分。玉や支えはウィーゴ本体とは接着しておらず、ただ口から差し込んでるだけ。

塗装は、実際の稲荷の狐は殆どが石や金属など素材色のままなので、置物として売られている焼き物の白狐や、祭礼用の狐面を参考にカラーパターンを考えた。

全体は白だが、今までのウィーゴのようなオフホワイトでは狐の凛とした印象にそぐわないので、Mr. カラーGXのクールホワイトを用いた純白を基本としている。
各外層の裏面には、アクセントとして朱赤を施す。これは、Mr. カラーのRLM 23レッドを使用。

本体 N 9.3 GSIクレオス Mr. カラーGX
GX1 クールホワイト
アクセント色 7.5R 4/12 Mr. カラー 旧蓋/新ラベル
C114 RLM23レッド

王子「狐の行列」の大狐面
王子「狐の行列」の大狐面。狐面の鼻筋の色は写真のような青系のほか、赤や金、黒などさまざまな配色がある。

顔の模様は概ね狐面ルールで、鼻筋の青はMr. カラーのエアスペリオリティブルー。
狐面ではもっと鮮やかな青が多いが、今回は背景の鳥居を含め朱赤を際立たせないのでやや弱めに、と云うのと、朱赤と共に狩衣小僧の装束の色と韻を踏んでいる、と云うのもある。
両眼の上には眉毛と、頬にヒゲが描かれることが多いが、鉛筆で下書きしてみてしっくりこなかったので省略。

鼻筋 5B 6/3 Mr. カラー 新蓋 C74
エアスペリオリティーブルー

眼球は金の白眼に黒の瞳で描かれることが多く、また黒目は小さい。
ウィーゴの目を丸ごと黒に塗ってしまうと狐的な目の鋭さが表現できないので、虹彩部分を金色、瞳孔部分を黒とし、目頭と眼尻の隈取を朱赤とした。
ここの表現はなかなか狐っぽくできたと思う。

「お稲荷ィーゴ」全景
全景。ターンエーウィーゴの時も芝生風のベースを用いたが、ちゃんと情景風に小道具まで作ったのは初めてだったり。

「お稲荷ィーゴ」左から
人の目線の高さから。

実写背景による疑似合成写真
実際の神社の写真をモニターに映して背景にしてみた。 室内照明と背景の色温度が違うので、なかなか色合わせが難しい。

実写背景による疑似合成写真
変わりだね撮影もう一葉、蝋燭を光源に灯籠の明かり風ライティング。 如何せん炎が大きすぎて、お焚き上げのようになってしまった。夜景風はもうちっと研究が要るな。


と云う訳で、ウィーゴでは初の3回構成となった。過去二作と比べるとウィーゴ本体よりは周りの構成物の方に視点が行ってしまい、情景仕立てと云うのは難しいものだと思った。
けど、全体のまとまり感はイメージ通り。
今までジオラマを完成させたことはなかったのだが (共同製作は昔やったが) 単品に比べると視線の誘導とか、ベースと主題の色彩バランスなど、普段意識しないことを考えるので中々新鮮だった。大変ではあるが、また作ってみたい。

「お座りさせて、化粧する – 1/35でメカトロウィーゴをつくる: 6」への2件のフィードバック

  1. こんにちは由良之助です。前に妙なコメント文がありますが今回はちゃんと稲荷ィーゴの話です。

    「牛」「金魚」と続いて今度は「鳥居」です。鳥居の造形物というのもあまり無くて、鉄道模型用の情景小物か厳島神社の土産物くらいしか見たことがありません。
    とにかく色味が良いのですが記事を拝見すると私の視力では捉えきれない部分から拘った造形が見られます。近所の神社で観察すると円柱の組合わせかコンクリ製が殆んどで、朱色で笠木塗り分けというのは少なく、春園燕雀様の拘りを感じます。

    『色彩の魔術師』は私が勝手につけた尊称ですが、魔術にもタネや仕掛けがあるといいますか、色彩が生きるのもしっかりした造形の裏付けがあるということでしょう。とは言え魔術師らしくトリッキーな手法も使われており、石畳の縁のテカりにメタリックグレイとは驚きつつも納得であります。
    肝心のウィーゴはクールホワイトで、春園燕雀様としては珍しいと思いましたがそこには当然意図があるわけでして・・・。
    私にはこのウィーゴはちょっとおっかないのです。一見機械であるのに中から「何か」が出てきそうです。見る者を畏怖させる冷たさの象徴としてのクールホワイトではないかと考えます。

    狐の面は不気味さのアイコンとしてよく使われますがこれは「稲荷ィーゴ」というよりも「狐憑きィーゴ」なのでは、と感じました。

    モノの配置で見る者の意識を操作できるのがジオラマ仕立ての効能で、ユーモラスに見えた金魚売りィーゴも金魚を狙うネコウィーゴと対峙するというツイッターの画像を見た時に、また違った印象を持ったのも事実であります。
    今回は小僧とウィーゴの並びに不吉さを覚えて視線を逸らしたので鳥居の印象が鮮烈に残ったようです。春園燕雀様の意図したものなのかはわかりませんが・・。

    怖さというとジェイソンやすけきよのお面といったモノもありますが「ピエロ」が一番怖いというひとは結構いらっしゃるようで、ピエロウィーゴというのもアリかとも思いましたが造形的には苦しいかも・・。

    普通免許の取得もあと一歩に漕ぎ着けたようで、ご健闘をお祈りしております。

    1. こんばんは、返信遅くなってしまい申し訳ありません。
      貧乏暇なしと云いますか、失業者と云うのは思いの外忙しいもので、東京での穏やかでゆったりとした日々が懐かしく感じられます。

      伝統的な木の塗り物の鳥居と云うのは見た目を保つためのメンテナンスにそれなりの手間や金が掛かるもので、観光収入があるようなところ以外はコンクリ製や樹脂製が主になりつつあるようです。今日的価値観では無粋に映りますが、これも案外数十年経つと郷愁や歴史を感じさせるようになるのかもしれません。
      昭和の頃はコンクリ造の城郭復元がとにかく残念なものと云う印象でしたが、今となっては現大阪城天守など、戦前のコンクリ技術や美的感覚を窺い知れる、本来の城郭建築とは別の方向での価値が感じられますし。

      クールホワイトについては御明察です。過去2作のウィーゴはいずれも人やケモノに親しまれる性格づけのものでしたが、今回は小僧も含め、可愛いと怖いの境目の妖怪的な存在を狙っています。ウィーゴのデザインは可愛らしいのですが、目つきなどはちょっと何を考えているか判らないような怖さがほんのりあり、そうした部分を強調してみると面白いかなあ、と云った感じで。

      あと、そのひとつ前の沼の会の話など……私は元々クラブに所属したことが無いので知らなかったのですが、一般的な模型クラブと云うのは一種の徒弟制の様な強固なヒエラルキーによって成り立っているところが多く、それにより技術や知識の継承が濃密になされる反面、息苦しくなってしまうことも多いそうで。

      沼の会はそうしたヒエラルキーを持ち込む人が居ないのが良い方向に作用していると思います。これは主催のきのこ氏の人徳のなせる業と思います。
      彼は沼の会メンバーの中でも最若手に属しますが、育ちが良いのか、どこか貴族的な部分があり、年長者へも嫌味なしにビシッと仕切れるのですよね。
      それゆえ、しょうもない年功序列やキャリアや技術によるヒエラルキーを作りたがる輩が付け入る隙がないのだと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です