短艇模型スペシャル No.3「八八艦隊系駆逐艦の短艇: 内火艇・通船・ダビット篇」 – 1/700で樅型駆逐艦をつくる: 20

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短艇模型スペシャル No.2「八八艦隊系駆逐艦の短艇: 内火艇・カッター篇」
前回、カッターだけで記事がべらぼうに伸びてしまったので、まさかまさかの「短艇模型スペシャル」第3弾。
今回は遂に完結。
や、書いてる方も3回も続くとは思わなかったよ、本当に。


まずは恒例の、おことわりから。

またまた、これでもかと云う位に長い商品名称対策で、以下、静岡模型教材協同組合の「ウォーターライン 小型艦兵装セット」を「WL小型艦兵装セット」、ピットロードのE品番の「WW-II 日本海軍艦船装備セット」を「PT旧装備品セット」、NE品番の「新 WW-II 日本海軍艦船装備セット」を「PT新装備品セット」とそれぞれ略記する。

今回も、カッターの際と同様、森恒英氏の「日本の駆逐艦」の各種短艇 (艦載艇) の図面[1] と、「吹雪型改」の「浦波」の公式図[2] にあったダビットの図面を基に、比較をしてみた。

各社7.5m内火艇の比較

WL小型艦兵装セットとピットロードの新旧装備品セットの7.5m内火艇比較 形状が複雑な所為か、旧世代の2者はモールドの処理や形状把握に苦労しているようだ。

WL小型艦兵装セット
品番: 518 / 定価: 972円 (税込)
形状把握は良いのだが、全体に一回り小ぶりである。付属の説明書には、実在しない「7m内火艇」と表記されており、7.5m内火艇の図面を基に、7mサイズで作ってしまったのではないかと思われる。
また、船室部分が、キャンバス覆いなのか、なにがしかの蓋なのか良く判らない謎の処理。
PT旧装備品セットV
品番: E-10 / 定価: 1,080円 (税込)
全長こそ正確なものの、幅・深さとも不足して全体に細い印象。また、カッターと同じく、側面形の形状把握に難があり、全く似ていないのが問題。
PT新装備品セットII
品番: NE-02 / 定価: 2,160円 (税込)
カッター同様、外形寸法は正確で、モールドは繊細と文句なし
上記2者と異なり、船室部分は露天状態だが、実物の写真を見るとキャンバスでカバーが掛かっていることが多いように思う。
PT新装備品セット5
品番: NE-05 / 定価: 2,160円 (税込)
カッター同様、上記IIのデータ共用と思われる。故に、外形寸法は正確で、モールドは繊細と文句なし

カッター同様、PT新装備品セットが傑出しており、WL小型艦兵装セット・PT旧装備品セットはいずれもやや難あり。
旧世代の2製品が開発されたのが1994年 (平成6年) 頃だが、森氏の「日本の駆逐艦」出版は直後の1995年 (平成7年) で、それまでは短艇について手頃な図面が無かったのかもしれない。

ただし、内火艇はカッターの場合に比べ、操舵室や発動機の位置関係の問題から、PT新装備品セットを使っても単純な中央部の切り詰めだけでは6m内火艇にはならない
真面目にバランスを取ろうとすると折角のモールドがかなり犠牲になるのが悩ましい。

ただ、No.1で触れたように、発売予定品のPT新装備品セット7には「吹雪型」専用のレアアイテム、6.5m内火艇2艘が新開発で含まれるらしい。
よって、バランス問題的にはこちらを切り詰める、もしくは0.5m (1/700で0.7mm) の差に目を瞑る方が得策かもしれない。

ピットロード 新 WWII 日本海軍艦船装備セット [5] の、7.5m内火艇を6m内火艇に改造 キャンバスはアルテコSSPの削り出し。柔らかいものの表現は苦手だ……

今回は、手元にPT新装備品セットIIが1セットだけあったので、それをベースにした。
しかし、前述のキャビン位置問題は私の技量では手に負えなかったので、全長短縮とキャビン位置変更だけ実施。
モールドは全てキャンバス掛けにすることで誤魔化した。
幸い? 、数少ない戦中・戦後の「蓮」の写真ではいずれもキャンバスが掛かっている[3] [4]ので問題ない。(そうか?)

カッター同様、プラストライプで舵を追加するとともに、スクリュー軸を伸ばしランナーで自作した。スクリューの羽根は、良い方法が思いつかなかったので省略。

なお、「栂」だけは、写真を見ると内火艇の位置にカッターが吊られている[5] 様なので、内火艇を搭載せず、カッター3艘搭載とした。
ちょうど、手持ちの内火艇のパーツが2つしかなかったので、渡りに船である、内火艇だけにね。(うまくない)

各社6m通船の比較

ハセガワ1/700「樅」のキットと、ピットロードの新旧装備品セットの6m通船比較 通船はピットロードの独擅場で、同社の技術進化がそのまま各セットの出来に表れている。

PT旧装備品セットIV
品番: E-7 / 定価: 1,080円 (税込)
同セットの他の6m級短艇と異なり、縦横深さ全て大きすぎ
また、平面形もカッターの様で、しかも平底形和船の筈なのに洋船の様に竜骨があり船底が尖っている
他の種類の短艇と混同されているのかも?
PT旧装備品セットVII
品番: E-12 / 定価: 1,080円 (税込)
IVよりは改善されたが、ややオーバーサイズ気味平面形は結構似ており、和船らしく平底になった (でもやや丸い)
PT新装備品セットII
品番: NE-02 / 定価: 2,180円 (税込)
寸法形状とも良く、モールドはシャープで文句なし。カッターと同様、舵までモールドされている。

通船についてはピットロードの独擅場で、シリーズが進む毎に品質が向上している
コストの面で旧装備品セットVIIと新装備品セットIIのいずれを採用するか悩むところだが、今回は手持ちで数が揃う旧装備品セットVIIを使用。

ピットロード WW-II 日本海軍艦船装備セット [VII] (旧シリーズ) の、6m通船の修正 新装備品セットには及ばないが、縁をシャープにして舵や櫓を足すと中々良い感じになる。

上述の通り、オーバーサイズ気味なので、縁を薄くするついでに一皮むく感じで小型化。
船底を平らに削ると、深さ過剰が解消されるとともに、和船らしい平底感も増して良い感じだ。
あとは、横桁を追加し、これもプラストライプで舵を追加。
操船用の櫓があるはずなので、ナノドレッドのカッター用オールのサイズを参考に、0.3mm丸棒で自作した。

各社ラフィング型ボートダビットの比較

ハセガワ1/700「樅」のキットと、WL小型艦兵装セット、ピットロードの新旧装備品セット、ナノ・ドレッドのラフィング型ボートダビット比較 各社、意外に形状解釈やサイズにばらつきが大きい。細さではナノ・ドレッドが際立っている。

WL小型艦兵装セット
品番: 518 / 定価: 972円 (税込)
形状・太さとも、悪くはないが、こと「樅」「若竹」のキットに使用する場合には、キットの方が細いので使用する意義が薄い
PT旧装備品セットIV
品番: E-7 / 定価: 1,080円 (税込)
独特の形状解釈だが、この形状のダビットが実在するのかは確認できず。
妙に太く、「樅」「若竹」のキットに使用する場合に (ry
PT旧装備品セットV
品番: E-10 / 定価: 1,080円 (税込)
WL小型艦兵装セット同様、形状は悪くはないものの、IVほどではないが太い。「樅」「若竹」のキットに (ry
PT新装備品セットII
品番: NE-02 / 定価: 2,160円 (税込)
細さはキットと大差ない印象だが、短艇を吊る滑車部分のモールドは秀逸なので、モールド重視ならこれがおすすめ。
「樅」「若竹」のキットについては、1隻分揃えるのに2セット必要なのが最大の難点
PT新装備品セット5
品番: NE-05 / 定価: 2,160円 (税込)
これも恐らくIIとのデータ共用で、細くシャープな成形。こちらは入数が増えたので1セットで1隻分揃う
ナノ・ドレッド
ラフィング
ボートダビットセット

品番: WA-12 / 定価: 1,296円 (税込)
きわめて細く、シャープなモールドで、今回の比較の中では唯一、明確にキットより細くなったことを実感できる。
側面の軽め穴まで再現されているが、PTのものと異なり、短艇を吊る滑車部分が無く、自作の要があるのに注意

ボートダビットは、前回触れたとおり、サイズが艦や用途によって異なるようなので、サイズの正確性についての言及は避けた。
写真の比較用図面は「改吹雪型」(特型改I型) 「浦波」の公式図[6] の、7.5m内火艇のもの。

ちなみに、「芙蓉」公式図[7] では、内火艇用のダビットの方が、カッター用のそれより高めに描かれており、内火艇ダビットは「浦波」とほぼ同じ高さのようだ。
ただし、側面形は描かれていないため、同一形式のものかは不明だが、写真で見る限りは「浦波」のものに似た形状に見える
1/700換算では、内火艇ダビットが高さ5.3mm、カッターダビットは4.8mm位になる。

「樅」「若竹」のパーツは、比較的細くてシャープで、こだわりが無ければ、キットパーツでも充分満足な出来。ただ、4艘分全て同じパーツゆえ、サイズ的にはカッターダビットとしては丁度良い高さだが、内火艇・通船用としてはやや低い。

WL小型艦兵装セットやPT旧装備品セットのパーツでは却って太くなってしまうので、グレードアップを図るなら、滑車のモールドが秀逸なPT新装備品セットか、抜群に細いナノ・ドレッドかといった選択になる。
私は、主砲に金属挽物を使った結果、相対的に他もそれなりに細くしないとバランスが取れないので、最も細いナノ・ドレッドを採用。
内側に斜めの支柱が入るので、伸ばしランナーで追加した。

ナノ・ドレッドのラフィング型ボートダビットを使用したディテールアップ ナノ・ドレッドのダビット+ピットロードの内火艇はやや窮屈。でも、比較した限りピットロードのダビットは更に小さ目なんだよな……

カッター・通船については、特に問題なく取り付けられたが、内火艇についてはやや窮屈で、現物合わせでダビットを曲げたり艇側を削ったりといった調整が必要だった。
クライプバンドは、プラストライプ0.5mmを更に半分の幅に切ったもので追加した。

実際に取り付けてみると、特に左舷前部などは甲板面に魚雷運搬軌条、懸架部分では艦橋の旗旒甲板があり、それらの隙間を縫うようにダビットが設置されていて、駆逐艦特有の密度感が堪能できる。

ハセガワ製の1/700駆逐艦「樅」をベースにした、「栗」の短艇周りを上から うまくピントが合わなかったけど、この辺の密度感が駆逐艦の醍醐味だよなあ (独断)


さて、今度こそ塗装編である。
文章にすると伝わり辛い方法で色を調合しているので、どう表現したものか悩み中。
作業自体は、もう基本塗装が終わり、仕上げ工程も終盤なのだけど。

「短艇模型スペシャル」は、今後どうしよう。巡洋艦作るときに、No.4やるかねえ。
意外に疲れたので本家がやってくれると嬉しいのだが、流石に特集は無理としても連載とかでやってくれないかなあ。(無理)


参考書籍

  • 森 恒英「駆逐艦が搭載した艦載艇」『軍艦メカニズム図鑑 – 日本の駆逐艦』グランプリ出版、1995年、278-281頁 ^1
  • 日本造船学会「一等駆逐艦 吹雪型 (性能改善) 浦波 一般艤装図 3/3」『明治百年史叢書242 昭和造船史別冊 日本海軍艦艇図面集』原書房、1975年、82頁 ^2 ^6
  • 田村 俊夫「艦艇秘録写真選 PART-2 駆逐艦『蓮』、『栗』&『第23号駆潜艇』」『歴史群像 太平洋戦史シリーズ57 帝国海軍 艦載兵装の変遷』学習研究社、2007年、42-43頁 ^3
  • 福井 静夫『写真 日本海軍全艦艇史』KKベストセラーズ、1994年、544頁 ^4
  • 雑誌「丸」編集部 『丸 季刊 Graphic Quarterly 写真集 日本の駆逐艦 ()』潮書房、1974年、157頁 ^5
  • 福井 静夫『海軍艦艇公式図面集』今日の話題社、1992年、124-127頁 ^7

すべて敬称略。

  1. minekaze1920 | | 返信

    こんばんは。弊ブログへのコメントありがとうございました。
    『短艇模型スペシャル』3部作、素晴らしい検証比較記事ですね!
    私にとっても“渡りにフネ”な内容で(笑)、じっくり拝読させていただきました。
    改めて各社の部品を比較してみると、結構違いがあるものなのですね。
    う~む、個人的には、できるだけ形状・縮尺ともにより良い部品を使ってみたいものですが…。
    コレクションの整合性とか、必要数を入手するためのコストなどを考えてしまうと、キットの部品で妥協してしまうことが良くあります。
    余談ですが、アオシマの「初春・子日(1933年バージョン)」キットのC部品には【6m通船】が3隻付いていて、2隻必ず余剰になります。形状・寸法はPT旧装備品セットVIIのものに良く似ていますが、メーカーにC部品だけ請求すると1200円になるのが痛いところです。
    今後の塗装編、どのような記事になるのか楽しみにしております。

  2. 春園 燕雀 | | 返信

    >minekaze1920様
    こんばんは。
    コメントありがとうございます。
    前の錨鎖の時もでしたが、お互い、工作のタイミングが微妙にシンクロしてますね。
    今回比較して思ったのは、開発時期の割には、WLのリニューアルパーツが意外に良い形状把握をしている事でした。
    旧キットにオマケ扱いで入っていることや、モールドのアッサリ感で、余り良い印象ではなかったので目から鱗が落ちる思いです。それだけに、寸法把握の誤りが惜しまれます。
    ひたすらハイディテールを求めていくなら、新PT+ナノドレなんでしょうが、予算を鑑みると私はダビットだけ抜群に細いナノドレにして、他は旧世代パーツにキャンバス掛けで誤魔化すのも手かな……とも考えています。
    まあ、完成させるのに数年掛かるペースなので、月当たりの建造予算で換算すると大名モデリングでも問題ない気がしなくもないですが (苦笑)
    そういやアオシマの新初春型はうちにも有ったな、と思ってみてみたら、初霜1945で、通船の代わりに内火艇「風」の謎の短艇が入っていました。
    長さは7.5mサイズで、形状は9m内火艇、しかも説明書では未使用で、リニューアルパーツの内火艇使用となっている。
    何でしょうね、これ? ただの設計ミスかなあ。

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