船体の艤装と演習砲・礼砲を工作する – 1/700で天龍型軽巡をつくる: 16

「船体の艤装と演習砲・礼砲を工作する

「天龍型」のスクラッチもいよいよ大詰め、今回は工作関係の締めくくりとなる、舷窓や舷外電路などの各種艤装関連や、小物類について。

舷窓回りなどは、検証に結構時間がかかった記憶があるのだが、記事に起こしてみると意外にボリュームがなく、いささか寂しさを感じる ()


舷窓と船体の付属品について

船首楼の舷窓は、ほぼ真横の写真が複数あり、比較的容易に位置を特定できた。
だが、艦尾舷窓は、同じ写真でも船体の長さゆえに斜め前方からの撮影となってしまっており、位置合わせの基準が掴み辛い。

唯一の手がかりとしては、1934年 (昭和9年) の左舷後方からの写真[1] がある。
この写真には、後檣の支索らしきものが舷側に固定されているのが確認できる。

その前後に他の支索が無いことから、この支索の固定位置を後檣の真横と推定し、その下の舷窓と、公式図面の船室の隔壁・フレーム位置を元に位置を決めた。

写真で見る限り、「天龍」と「龍田」に舷窓配置の差異はない模様。
但し、左舷後部の舷窓下にある汚水捨て管? は「天龍」固有のものである。

「天龍型」の舷窓推定図: 1/700
画像クリックで拡大。前部の舷窓は概ね正しいと思うが、後部のものは上記のとおり根拠が弱く、両端位置が多少ずれているかもしれない。

逆に、舷外電路は開戦時には「龍田」のみが装備している[2] が、1941年 (昭和16年) 8月の写真[3] では不鮮明で舷外電路のパターンは読み取れない。
「龍田」は同月末に舞鶴工廠で入渠[4] しており、この写真の後に装備された可能性もある。
ここは、同じ舞鶴鎮守府所属で、相前後して舞鶴工廠で出師準備を行った「名取」のパターンを参考[5]して、曲がり角のクセなどを似せてみた。

フルスクラッチ「龍田」の舷外電路
画像クリックで拡大。船首楼後端のややRを描いて舷外電路が曲がっている辺り、「名取」のそれを踏襲。

錨鎖とチェーンストッパーは、前回同様、エアコン用PVCテープの切り出し
今回は、前回より写真が綺麗に撮れたので、仕上がりが判りやすいように思うのだが、どうだろうか。

エアコン工事用ダクトテープを用いた錨鎖表現
ダクト用PVCテープの表面パターンは色々あるが、こんな感じの菱形パターンのものが錨鎖向け。

機銃と礼砲、装填演習砲

煙突両舷の13mm単装機銃は、形状・サイズ文句なしのナノ・ドレッドの物を使用。

船首楼後端の山ノ内5cm礼砲は、「球磨」の図面[6]後甲板の装填演習砲は、「長鯨」の図面[7] を参考に自作。
ピットロードの新艦船装備セットの25mm単装機銃を基に、全長と高さを切り詰め、それらしく削り込んでみた。

25mm単装機銃を使った、各種小型銃砲の製作 ピットロードの樹脂は適度な硬さがあって、こういった削り込みがしやすい。


さて、これにて工作関連は一通り完了、あとは塗装のみである (構成の都合でもう色がついてしまっている写真もあるが)。
今回は本編が意外と短くまとまったので、小ネタをひとつ。
直接工作に関する話題ではないのだが、1/700艦船用の各種装備品パーツを、このような仕切り付きの小物入れに種別ごとに分けておくと、何かと便利。

仕切り付き小物入れによるパーツ整理

例えば、製作中の作品に必要な装備を買い足す場合、何がいくつ不足するのか、とか、今回の礼砲のように改造素材にできるバタついている部品は何か、といった事が一目瞭然なのである。また、ランナー部分を処分できるので、保管スペースも圧縮できて一石二鳥である。

私は部屋の美観を損ねるのが嫌で無印良品のアクリルケースを使っているが、特に外観にこだわりがなければ100円ショップのプラ製ピルケースや工具箱でも代用できるので、武装パーツの管理に難儀している方はお試しあれ。


参考書籍

  • 「『天龍』『龍田』」『歴史群像 太平洋戦史シリーズ32 軽巡 球磨・長良・川内型』学習研究社、2001年、74頁 ^1
  • 田村 俊夫「日本海軍最初の軽巡『天龍』『龍田』の知られざる兵装変遷」『歴史群像 太平洋戦史シリーズ51 帝国海軍 真実の艦艇史2』学習研究社、2005年、93-94頁 ^2
  • 『写真 日本の軍艦 第8巻 軽巡I』光人社、1990年

    • 石橋 孝夫・戸高 一成「軽巡洋艦『龍田』写真説明」24頁 ^3
    • 伊達 久「軽巡洋艦『龍田』行動年表」18頁 ^4
  • 福井 静夫『写真 日本海軍全艦艇史』KKベストセラーズ、1994年、291頁 ^5
  • 「軽巡『多摩』」『日本巡洋艦史 世界の艦船 1991年9月号増刊』海人社、1991年、146頁 ^6
  • 日本造船学会「潜水母艦 迅鯨型 (改造) 長鯨 一般艤装図」『明治百年史叢書242 昭和造船史別冊 日本海軍艦艇図面集』原書房、1975年、72
    ^7

全て敬称略。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です