各社キットの、単発機用SC系爆弾を比較してみる – 1/72でJu 87 B「スツーカ」をつくる: 2

各社キットの、単発機用SC系爆弾を比較してみる - 1/72でJu 87 B「スツーカ」をつくる: 2

年内最後の更新は、爆弾特集……地味だな。

またしても機体に触れないという暴挙 ()
今までの経験上、装備類を後回しにすると高確率で飽きてしまって雑になるので、士気が高い内に作ってしまおうという算段である。


当時の写真を見ると、1940年頃のJu 87 Bの爆装は250kg通常爆弾 (以下、「SC 250」) ×1に50kg通常爆弾 (以下、「SC 50」) ×4の組み合わせが多い。

同時代資料ではないが、1953年に米軍 (department of the army and the airforce) がまとめた資料「Army Technical Manual TM 9-1985-2/Air Force Technical Order TO 39B-1A-9 German Explosive Ordnance (Bombs, Fuzes, Rockets, Land Mines, Grenades & Igniters)」(以下、「米軍資料」) [1] に基本性能と寸法、内部図解が入っており、独軍オリジナルではないものの、それなりに信頼のおけるデータかと思う。

イタレリのパーツは、説明書上、250kg爆弾と称しているが、米軍資料の寸法に比べると全体に大きい。そして、何故かフジミの500kg通常爆弾 (以下、「SC 500」) と瓜二つ……どうやら、イタレリは寸法・外形ともSC 500と取り違えてしまっているようだ。

じゃあ折角だから、今回不採用にしたフジミのキットからSC 250を、と思ったが、これは逆に弾体が不自然にひょろ長い。先の米軍資料の2,500kg爆弾のイラストみたいなバランスで、この絵を模型化したのでは? という疑惑が。

各社 1/72 Ju 87 Bの、「自称」250kg 爆弾
フジミのSC 250は、実物のSC 2500には然程似ていないのだが、このイラストには激似。この画をSC 250と見間違えた???

……何やってんだ、あなた方。
フジミの間違い方が斜め上過ぎて、ちょっと面白いわ。

一応、形状的にはSC 500とSC 250は相似形なので、市販の5mmパイプとキットの弾頭を組み合わせて何とかならぬか、と思ったが、弾頭のテーパーのラインが全くつながらず、挫折。仕方ないので、金は掛かるが他キットから流用する。

てことで、比較対象の本命は、タミヤのBf 109 E。SC 250が不要パーツとして同梱されており、キットのまま普通に仕上げても影響が出ないのが素晴らしい。あと、自宅に積んでいた、ICMのBf 109 E-7/BとハセガワのMe 262 A-1aも比較してみる。

各社1/72ドイツ大戦機キット付属の、SC系爆弾パーツ比較
ICMは全体的に優秀なのだが、飛行機本体はタミヤのデッドコピーなので倫理的にお勧めしづらいのが難。

並べてみるとこんな感じ。

SC 250

根本的に取り違えているイタレリは論外フジミはやはり直径が1mmほど細いのが貧弱な印象。タミヤ109Eは逆に本体が太すぎて先端も丸いのが気になり、新しい割に似てない。

ハセガワの262とICM109はほぼ互角。古参キットのためにディテール皆無なものの、ハセガワが外形は一番似ているICMは僅かに尾部が長いが、写真と並べなければ誤差のレベルで次点。両者とも弾頭のラインが秀逸

SC 50

SC 250に比べれば比較的品質が安定しており、古いフジミは別物だが、イタレリとICMは合格点。ただ、イタレリはやや尾部が短く細部のキレに劣り、総合的にICMに軍配

SC 500

今回は使わないが、ついでに。フジミとイタレリ (前述のとおり、公称「250kg爆弾」) はほぼ同一形状で、直径は正確だが、全体に寸詰まり。弾頭形状の分、僅差でイタレリの勝ちだが、真面目に似せようとすると手間が掛かる。

ICMの爆弾をJu 87仕様に

上記の結果、総合的にレベルの高いICMをベースにする事とする。1機分で、丁度SC 250×1と、SC 50×4が揃う。

ICMの1/72 Bf 109 E-7/B用爆弾をイタレリJu 87 B-1用に
ICMのSC 250は、尾部を僅かに詰めるだけで、かなり実物そっくりのバランスになる。

SC 250は上記のとおり、尾部が長めなので、後端を0.5mm程カット
安定翼がやや厚いのでフチを削って、プラストラクトの0.3mmプラ棒で支柱を追加。ここまでは、109に搭載する場合も同様。

更に、Ju 87の胴体爆弾架に搭載する場合は、急降下爆撃用リングが胴体に付く
これは胴体中ほどのアイボルトを貫通させて取り付けるので前後位置は決まっており、1/72だと、安定翼前端から5.5mm前方にリングの中心線が来る

リング本体は1.2mm幅に切ったプラペーパーで作成、懸架時に下に来る面に2本のピン型の留め具が付くので、プラストラクトの0.3mmプラ棒で再現した。


さて、最後に、今回の比較で触れたキット以外のオススメの爆弾パーツを、ツィッタァ上でたいらい氏が紹介されていたので追記したい。
いずれも、今回紹介した物より高価なキットだが、自宅にデッドストックが有る方などは、こちらも候補にされると良いだろう。

こっちのハセガワは、下記のJu 88のもの。

更に、上記についてのたいらい氏の補足。
“補足として、Ju88の爆弾はJu188にも入ってて、エデュ110の爆弾はプロフィ版だと安定フィンの補強帯がエッチングで入ってます。レベルのJu88 () に入ってるのもいい出来ですよ。”

この辺りは、飛行機本体が無駄になりやすく、やや上級者もしくは富裕層 () 向きか。

で、冒頭に述べたフジミのSC 2500疑惑について、ツィッタァ上で呟いたらツッコミが。

うひゃあ、全否定。
半可通が思いつきで適当な事を云うと、マヌケを晒す羽目になるという教訓である。
尤も、これをきっかけとして、たいらい氏と交流がはじまり、色々と情報や資料が入手できたので怪我の功名と云えよう (反省してない)


参考ウェブサイト

「各社キットの、単発機用SC系爆弾を比較してみる – 1/72でJu 87 B「スツーカ」をつくる: 2」への2件のフィードバック

  1. 一連の記事大変興味深く読ませていただきました。
    既に入手済みかもしれませんが、ズヴェズダNo.7306のB2とレベル04620のB2/R2について。
    前者は長さ26.8mm、フィン6.2mm角、本体6.0mmとSC500に近いです。
    後者は25.4mm、フィン6.0mm角、本体5.8mmで記事内のイタレリの物と同一形状です。
    といいますか、キット自体がイタレリNo.079ですね。
    手持ちのエアフィックスA03081のBf110のSC250が寸法、形状ともに良さそうなので、記事を参考に両機に流用しようと思います。

    1. バス鉄工所さま
      はじめまして。コメントありがとうございます!
      自分で調べていても思ったのですが、機体に比べて爆弾は資料が少ないので、メーカーも勘違いや推定で作ってしまうのは致し方ないのかなと思います。ただでさえ、戦闘機以外は資料に恵まれませんし。
      ズベズダB-2は記事で引用していた、たいらい氏がツイッタァ上でレビューされていて気になってはいるのですが、ここでこれ以上手を広げると収拾がつかなくなるのは疑いないので、指を咥えて眺めております。
      地中海作戦時の黄色い鼻のR-2はいずれ作りたいと思っているので、そこでイタレリとズベの比較はしてみたいですね。
      まあ、その前にさっさとB-1完成させろってハナシですが……。

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