告知と近況

今年ももう半分終わろうか、と云う時季になって、今年初の更新である。すまねえ。身内に人死にが有ったり、まあ波乱であったのよ、この半年。


そんな中で、去年前半からほぼ1年弄り続けてきたヤマシタホビーの睦月型の作例が、今月発売の月刊ホビージャパンに掲載。

ヤマシタホビー製1/700「睦月」のディテールアップ作例 キット名どおり、開戦時の「睦月」として仕上げた作例。キットは「長月」に近く、細々と修正点は多い。

ヤマシタホビー製1/700「睦月」をベースとした「水無月」の作例 「皐月」~「長月」までの中期型にあたる1隻。実は「睦月」を再現するより簡単。

模型自体の工作は特に目新しいことはしてないが、記事としては睦月型全12隻の識別用側面図を主とする、と云う試みをしてみた。また、それに合わせて相違点再現については普段より突っ込んで作り分けている。

ヤマシタホビー製1/700「睦月」のディテールアップ作例誌面はこんな感じ。基本的に画の描ける人じゃないので、物凄く疲れたぞ……!

絵面でピンときた方が居ると嬉しいのだが、私の艦船模型の原点である衣島先生の図面集的なアプローチを自分の力量でやるならこうなるかな、と云う感じ。現在の1/700艦船模型は精密指向が強く、ともすればコレクションモデルの側面が忘れられがちだが、このスケールならではの楽しみとして「同型艦をズラリと並べて部隊編成や個艦の相違を楽しむ」と云うのは欠かせない要素と思っている。

モデルアート増刊「日本海軍艦艇図面集」以前も掲載したが、家宝の直筆サイン本。

かつての私自身が先生の図面集を眺めて思ったように、読者がこの記事を読んで「ああ、ここだけ押さえれば○○が再現できるなら、やってみようかな」とお気に入りの一隻に手を付けて貰えれば無上の喜びである。


さて、今月はもうひとつ告知がある。月刊モデルアートに新キットレビューとしてアオシマの「ジャーヴィスSD」が掲載される。

アオシマ製1/700「ジャーヴィス」基本設計は秀逸だが、考証面に混乱が見られ、指示通りに組むと色々チグハグになってしまうのが罠。

丁度「睦月型」を納品して「ジャーヴィス」に掛かるか、と云うタイミングで岳父が世を去り、葬儀等諸々で当初より作業時間が大きく削られてしまい、かつ精神状態も最悪な中での製作となってしまった。

幸い、受注検討のタイミングで偽ジョンブル氏に資料関係の相談をしており、訃報を聞いた氏が基礎的な考証について纏めたものを教えて下さったので大幅にリサーチの時間が短縮でき、辛くも〆切を落とさずに済んだ。

本来なら謝辞を誌面に掲載するところだが、今回はいつもの様にキャッチボールをする時間が無く私の独自考証で進めた部分もそれなりにあり、後に大きな誤謬が判明した際に氏の名誉を損ねかねないために差し控えた。

製作コンセプトとしては、上記の条件から、洗いだした修正点の中でも効果の高く、少ない手数で完結する部分に工作を絞り、迷う部分は工作時間の掛からない解釈を採る、と云う感じで進めた。その結果として、キットの設定と異なる竣工時仕様での製作としたが、箱絵の姿を再現したい方もおられるだろうし、寧ろ新キットレビューとしてはそちらを期待される方が多いのでは、と考え、キットの設定年次として完成させるための修正点リストも併せて掲載した。

手の遅い私でも実作業2週間程度で仕上げられたので、作例の仕様を踏襲するだけなら手の早い人であれば1週間と掛からないであろう。


ホビージャパンとモデルアート書影。

上記のとおり、対照的な条件やコンセプトの両作例だが、艦船に詳しくない方が見れば同レベルの作品に見える筈。普段から折に触れて述べている「表現の解像度を揃える」と云う話だが、両誌の作例を見比べていただければ、感覚的に「ああ、そう云うことね」と腑に落ちるかもしれない。と云う訳で、是非両方買って下さい (酷いオチだ)

「告知と近況」への2件のフィードバック

  1. こんにちは由良之助です岳父様のお見送りから作例原稿同時進行怒涛の日々でお疲れ様です。
    こちらはコロナ騒動真っ盛りでしたが私自身は在宅で出来る職種では無く、夜の街を出歩く習慣も無いので特に変化はありませんでした。相変わらず自前のネット環境ナシですのでバーチャル沼の会も参加できずですが秋葉原工作室さんは自粛を持ちこたえてくれましたので何れまた・・といったところです。

    睦月型の原稿拝見しましたが同型艦の(武装などよりも艤装品の)相違点の解説記事は戦艦や重巡ばかりで駆逐艦の記事は少ない(軽巡もですが)のでこのような記事を待っていました!
    フネ本体のほうは乾舷高さ調整が効果覿面でシルエット表現における重要性を感じさせるところであります(喫水線も円弧を描いておりますし)。

    ジャービス記事はいつもの偽ジョンブル様へのサンクスが書いていない?と思っていたらそのような事情でありました・・(本当に怒涛の日々だったのですね)。
    アオシマの商品紹介ではどうやってもこのようなアプローチにならざるを得ないといいますか毎度の如く考証がとっ散らかっているところを整理するだけで一本記事になってしまうといいましょうか・・
    英国艦のこの系統のグレー、日本の軍艦色と似た雰囲気になりますね・・。

    とりとめの無いコメントになってしまいました。いずれまた・・

    1. こんにちは。東京はえらいことになっているようで。昨秋帰京した際も台風でとんでもない有様でしたが、どうも都は受難続きですなあ。バーチャル沼の会は手軽に都内へ出られない私にとっては僥倖でしたので、終わってしまったのは些か寂しいですが、工作室復活でなによりです。なんせあそこが無くなってしまうと、宿無しの私は帰京の際に帰る場所が無くなってしまいます。

      さて、記事をご覧いただきありがとうございます。睦月についてはかなり狙い通りの誌面に仕上がりまして、異例のページ数を割いて頂いた編集氏に感謝です。この手の記事、大型艦よりむしろ小艦艇向きだと思うのですが、他で見掛けないのは手間に見合うほどの需要が無いのでしょうね。昔の艦スペの海防艦全形式作例とか大好きだったのですが。謝辞については、感謝を示せる反面、どの部分まで協力が及んでいるか、と云うのは記事では判らないですから、私がやらかして氏の与り知らぬところで評判を落としてしまうのは申し訳ないですからね。その辺りは今後もあるべき謝辞が無ければ、ああ、裏取りする暇のない急ぎ仕事だったのだな、と眉に唾をつけてお読みいただければ幸いです。

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