キットの船体は目立つ寸法差異もなく、艦首フレアの感じなど実物の印象を良く捉えていると思う。ただ、いくつか気になる点があり、しかも修正難度が割と高いので、完璧を目指すと大変かもしれない。
最も目立つのは舷側装甲帯の高さで、装甲帯上面はやや傾いているのだが、写真とキットを見較べると実物の傾斜上端の高さにキットの傾斜下端がある。すなわち、装甲帯上面の傾斜分だけキットの装甲帯は高め。
左から、実物・舷窓高修正前・修正後。作例では舷窓の高さのみ調整しているが、完璧を期すなら装甲帯上端を下げたいところ。
それに加え、キットでは装甲帯前半の上に来る舷窓は装甲帯との距離が実物に近く、その分上甲板までの距離が狭い。そして装甲帯後半の上の舷窓は逆に、上甲板との距離は適切な分、装甲帯までの距離が短い。
これ、ある程度設計進んだところで装甲帯上端ラインの読み違いに気づいて、苦肉の策として上下いずれかだけでも舷窓の高さを合わせようとしたんじゃなかろうか。
上部構造の一部にも似たようなミスがあり、ディテールが細密であるがゆえに一見正確そうなのだが、写真と見較べると舷窓の高さがガタガタなのはあまり美しくない。
完璧を目指すなら装甲帯上端を1mm前後削って低くすれば良いが、正直私の技量では真っすぐ削れる自信がなく、高さが正確になった代償としてラインが歪んでしまうのは避けたかった。あと、鷹翔のキットは失敗した時の再入手が難しいので、それで作例を落としてしまうリスクは抱えられなかった、と云うのもある。
と云う訳で、リスクの低い穏便な解決として、作例では舷窓の高さを揃えるのみに留めた。キットのように舷窓の上下一方のみを正確に取るのではなく、舷窓上下の間隔の比率を実物に近づけて違和感を消す方向性。具体的には下写真参照。
せめて上に寄せるか下に寄せるか統一されてれば、目を瞑るという手もあったのだが……。
もうひとつ、キットで省略されているのが上甲板に沿うナックルライン。最も目立つのが艦首だが、1番砲付近で消失しつつ、その付近から上甲板までの幅が半分くらいのナックルラインが並行して始まり艦尾まで至るようだ。
左舷を見ると2重のナックルラインに見えるが、右舷を見ると上の方のラインが確認できず、ただの外板継ぎ目?。
1番砲砲身横の辺りで艦首からのナックルが終わり、艦首では継ぎ目のように見えた線が中央部ではナックルラインになっている。
中央部で明瞭になった上寄りのナックルラインは艦尾まで続く。
1/700に換算すると、艦首の方は上甲板から0.5~0.7mm、中央部から艦尾にかけてのナックルは0.2~0.3mmくらいの間隔か。これも装甲帯の高さ同様、上手い事仕上げる方法が思いつかなかったので割愛している。
キットは外板段差表現のために、船体フレアが直線的に見える。
実艦写真の印象だと、フレアはこれくらい滑らかな印象。
キットでは外板継ぎ目が段差で表現されており、また舷窓上の庇、所謂「眉毛」がモールドされているが、上記写真で判るように実物ではいずれもかなりのアップでなければ確認できない。また、前述の舷窓位置の修正との兼ね合いもあり、作例ではいずれのモールドも削り、段差モールドの所為でカクつき気味だった艦首フレアの面構成を滑らかに整えている。
冒頭に書いた通り、船体の抱える難はいずれも修正難度の割には印象の変化に乏しい。特に最終時の迷彩にしてしまうと実物でも判りにくいので、余程PoWに思い入れのある人以外には修正はお勧めしない。素組でも手数を要する細密キットなので、割り切るところは割り切らないと、永久に完成しなくなってしまうのが怖いところだ。
写真引用元
- 『第2次大戦のイギリス戦艦 世界の艦船 2004年11月号増刊 第634集』海人社、2004年、78頁
- 『Imperial War Museums』2021年2月閲覧