各兵装のバランス感を意識してディテールアップする – 続・1/700で天龍型軽巡をつくる: 8

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今回は、砲雷装関係のまとめ。考証面はほぼ過去記事で述べたので、専ら修正ポイントだけ知りたい、と云う人向けの工作メインの記事である。

キットは過去の他社軽巡キットと比べてかなり高水準なのだが、パーツ間での解釈や整合にややバラつきがある。そのあたりをどのレベルに揃えるかが攻略のポイントになるだろう。


今回の連載は、モノがある程度完成してから始めると云う今までにないパターンだったため、構成が判り辛いものとなってしまった。
本稿は、砲雷装についての記事だが、考証面で以前の記事と重複する点が多く、全て書き出すと冗長になってしまうため、詳細については文中の過去記事へのリンクを適宜ご参照いただければ幸いである。

主砲には防水布を

新キットの主砲パーツは、過去にプラキット化された三年式14センチ砲の中でも、1、2を争う出来ではなかろうか。
以下の比較を見ていただくのが、一番手っ取り早い。

1/700 14cm単装砲の各社パーツ比較スクラッチ版の際の比較写真に、同条件で撮影した新キットのパーツを加えたもの。

以前、初期型砲盾として最良と評したタミヤ阿武隈と比べた場合、タミヤが過去の5,500級と整合を取るかたちで方針を太めにしていたのに対し、ハセの新キットでは完全に他者との整合を切り捨てて実物に似せている。
両者とも一理ある解釈なので優劣はつけ難いが、砲盾後端をちゃんと垂直にしてある分、僅差でハセ天龍の方に軍配を上げたい。

但し、他キットへのパーツ取りとして考えると1基あたり税込540円と、ピットロードの新装備セットに匹敵する価格となるので、流用目当てならタミヤ阿武隈をお勧めする。

「龍田」の4番砲砲盾 連載第2回より再掲。不鮮明ではあるがレンズによる歪み等ではないと思う。[1] [2]

惜しむらくは、折角「龍田」専用ランナーを起こしたにもかかわらず、特徴的な4番砲盾を再現していない点だが、これは自分でスクラッチした時も気付かなかったので偉そうには云えない ()
修正は簡単で、キットの後端を斜めに切るだけなので「龍田」を組む人はぜひ試してほしい。

また、キットでは防水布が再現されていないので、プラ板とラッカーパテで再現した。
プラ棒で芯を作って濃い目の瓶サフでコート、生乾き時にナイフの先などでつついてシワを作る。芯を入れた方が、総てパテで作るよりシルエットが崩れ辛く、乾燥も速い

砲身基部の防水布の再現細かいシワの再現より、プラ棒の芯の時点で全体のシルエットを似せる方が重要。

魚雷周りはスキッドビームをシャープに

キットの発射管は適度な省略と正確な寸法で一体成型されている。
ただ、以前触れたとおり、1942年 (昭和17年) 春に防弾板が追加されているので、プラ板で再現した。

「天龍」の1番発射管防弾板
第4回より再掲。手軽な割に印象が大きく変わるので、ソロモン夜戦以降の仕様で作るならおすすめの工作。

旧キットでは予備魚雷置場と共に丸ごと省略されていた魚雷積込用のスキッドビームは、今回ちゃんとパーツ化されている。

予備魚雷置場は、格子枠にキャンバス掛けと思われるが、キットパーツだと表現が硬く、布ではなく金属プレスに見えるので作り直し。
プラ棒をエッチング金網で囲い、その上から糊付アルミ箔を貼っている。

プラ板+エッチング金網+糊付アルミ箔による布張り表現
左から、金網張り状態、塗装前、塗装後。

スクラッチ版の際は、金網にマスキングテープで再現していたが、アルミ箔の方が角がシャープになるので、こうした四角いモノの場合は向いていると思う。

プラ板+エッチング金網+糊付アルミ箔による布張り表現
スクラッチ版との比較。アルミ箔の方が、全体の矩形シルエットがはっきりする。

スキッドビームは前後とも斜め前方に向けて渡されているが、スクラッチ版の際に検証した通り、前部のスキッドビームは真横に渡されていると私は考える。また、艦首尾方向に延びる桁はパーツにないが、この有無については確信が持てないので、キットどおり無しとする解釈もあろう。

後部の物は形状的には正確だと思うのだが、いささか太い。よって、前後ともプラストラクトの0.3mm角棒で作り直し
併せて艦首尾方向の桁も追加した。形状的には、スクラッチ版と全く同一の解釈である。

ハセガワ「天龍型」魚雷用スキッドビームの修正
形状解釈をキット通りとするかは判断の判れるところだが、スリム化については大いに精密感を増すので迷わずおすすめ。

高角砲は砲身を細く

高角砲は主砲に比べてやや太く、ややキット内での整合を欠いているように感じる。
ピットロードの新装備セットが使えれば理想的だったのだが、ちょうど当時入手難だったため、キットの砲身と駐退器を真鍮線に置き換え、併せて俯仰用ギアと足場をプラ材で追加した。
砲身を換装すると意外と良い感じになったので、敢えてピットの物を探し回らないで正解だった気がする。

ハセガワ「天龍型」8cm高角砲のディテールアップ
キットは砲身こそ太いものの、基本形状自体は踏まえているのでちゃんと手を入れると見違える。

また、1942年時には高角砲周囲に弾薬箱が増設されているが、形状や位置は不明なので、推定で取り付けた。

天龍型の高角砲側弾薬包筐
第4回より、砲の周りの3つの白箱が、追加した弾薬箱。

機銃は本体を小さく、足場を大きく

連載第3回で検証した通り、キットの機銃まわりは単装時代の機銃座にやや大ぶりな連装機銃を載せているため、かなり窮屈。
また、後部機銃座のために端艇を移動させる設定にも些か無理があるように感じる。

「天龍型」後部機銃台と短艇移設についての仮説
第3回より、後部機銃座の仮説。キットのままだと前部の予備魚雷が取り出せない。

よって、前後機銃台とも、据付要領の値[3]に基づき、直径約5mmとなるように新造して置き換えた。
また、機銃そのものも前述のとおり大きめのため、ナノ・ドレッドに換装している。

「天龍型」前部機銃台平面形についての仮説
これも第3回より。これくらいのバランスでなければ、窮屈すぎてまともに機銃が操作できないのでは? 弾薬箱はいつも通り、プラ棒+ハセガワのエッチング水密扉。

爆雷装備は「龍田」を差別化

上甲板を作り直した関係で全て新造しているが、基本的にキットの解釈と一致した見解なので、レイアウトはそのまま。
スクラッチ版からの変化は、爆雷投下台に爆雷を装填状態としたところ。特に、機雷敷設軌条兼用の投下台は特型駆逐艦の写真などを見ると複数の爆雷が並んでおり見栄えがするので、そのまま踏襲してみた。

また、乗組員証言に基づき、「龍田」の爆雷投射機は左舷1基のみとしているが、これは両舷説もあるので、キット通り「天龍」同様の配置でも誤りではない。

「天龍」「龍田」爆雷投射機の違い
両者の差別化のため、「龍田」は左舷用1基説を採用。また、主砲の項で述べた「龍田」の砲盾にも注目されたし。

その他砲熕兵装

艦尾の装填演習砲らしきものは、やはりキットでも同様に解釈している。詳細な資料は持ち合わせていないが、キットの形状で問題ないように思えたので、他の演習砲を参考にして砲身部分上面へ溝を彫ってみた

ハセガワ「天龍型」装填演習砲
砲身上面に溝を切るだけで装填演習砲らしくみえるものだ。

また、今回は1942年仕様なので取り付けていないが、42年春の工事までは船首楼後端に5cm礼砲が装備されていたようなので、開戦時で作る場合は他社製の単装機銃などを流用して再現してやると良い。

25mm単装機銃から作った5cm礼砲
写真は開戦時で製作したスクラッチ版。礼砲はピットロードの新武装セットの25mm単装を切り詰めて作成した。


記事内の比較写真をご覧いただくと判るように、キットでは主砲や魚雷発射管など比較的太目の構造物についてはかなり正確なスケールダウンを行っている。
他方、高角砲や機銃、スキッドビームなど、細めの構造物については割り切って太目にしており、それらの距離が近いとかなりアンバランスに見えてしまう。

特に、主砲と高角砲は、一見すると高角砲の砲身の方が太く見えるくらいで、今回は前者の主砲や発射管を基準に後者をスリム化するアプローチで工作した。

既に5,500t級などをキットパーツの方兵装でコレクションしているような方であれば、逆に後者を基準に、主砲の砲身をXランナーの潜水艦用14cm砲などに換装する方が見た目にしっくりくるだろう。

こう云った細部アレンジや省略のルールは大縮尺であるが故、唯一の正解と云うものは導きづらい。それは逆に云えば作り手個々のこだわりが発揮できる部分であり、私がこのスケールが好きな所以でもある。


参考書籍

  • 『日本海軍艦艇写真集 巡洋艦』ダイヤモンド社、2005年、145頁^1
  • 福井 静夫『写真 日本海軍全艦艇史』KKベストセラーズ、1994年、268頁^2
  • 森 恒英『日本の巡洋艦』グランプリ出版、1995年、220頁^3

以上、全て敬称略。

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