マイナー艦の資料は一期一会 – 1/700で樅型駆逐艦をつくる: 8

資料は新しいほど情報量が多い、とは限らない。 特に商業ベースで刊行される場合は、人気モノ以外の情報はどんどん失われていく場合もままあるのだ。

すぐにできることを先延ばしにしてもロクなことはない、というのは夏休みの宿題に限った話ではない。
危うく、今までの全ての作業が無駄になるところだった


前回からの流れで、艦橋の基本構造を作って全体のバランス取りを終わらせる予定だったのだが……どうも船体の反り癖が日々強くなっていく。
作業の都度、手曲げで強制的に戻していたのだが、一向に改善しないどころか、悪化しているようにすら見える。

甲板上には日々コワレモノが増えていくため、あまり無理な力は加えたくない。
本来なら、船体延長の段階で対策をしておけばよかったのだが、退屈な作業なので先延ばしにしていたツケをまとめて払う羽目となった。


船体底面に前後2か所、輸送箱固定用のナットを埋め込む。
当初は船体パーツに直接固定するつもりだったのだが、前述の通り、反り癖が中々直らないので船底板を追加して、そこに固定することにした。
作業中以外は輸送箱にボルト止めしておき、できるだけ反り癖を矯正するように心掛ける。

接着してから1週間ほど放置して反りの塩梅を見たところ、1勝2敗

2敗の内のひとつは、「蓮」の反りが完全に収まなかった事。

前後ナット間は平滑になったものの、ナットより先の艦首部分が反りあがってしまった。
艦首幅の都合上、船首楼部分にはナットが入らなかったのが災いしたようだ。

仕方ないので、反り上がり部分の底面にもう1枚プラ板を貼り、浮き上がり部分を埋めた。
高々0.3mm程度ではあるが、このスケールでの0.3mmは馬鹿に出来ない
折角、全体の乾舷を下げるように工作してきたのに残念だ。

2敗の内のもうひとつは、「栂」の艦尾側ボルトが外れなくなってしまった事。

ボルトをはずそうとしたら、「バシッ」と嫌な音がして、船体内でナットが空転している感触
ラジオペンチでボルトを引っ張りながら回してみたり、艦尾の接着面を剥がしてピンセットを差し込みナットを掴んでみたりしたが、埒が明かない。
どうやら艦底接着時の接着剤がナット内に流れ込んでしまったようだ。

これは最悪、艦尾切断して作り直し廃艦か……とイヤな汗が背中を伝う。
本物の「葦」とか「不知火」みたいな話だなあ、というのは勿論、後になっての感想。その時点では当然、そんな事を思う心のゆとりはない。

一か八か、エッチング鋸とナイフで艦底板全体を切り離してみることにした。
元々、反り修正のために内部に瞬着パテを流し込み、かなりがっちり固定していたので、切り離しに2時間近く掛かったが、なんとか上構を壊すことなく完了。
あらためて、艦底板をつけなおした。

ハセガワ製の1/700駆逐艦「樅」の、船体の反りを矯正
一番手前が艦底を作り直した「栂」。 再接着直後なのでプラ板をまだ整形していない。
「栂」艦首のすぐ向こう側辺りの穴に惨事の痕跡が ()

事故の無かった残る1隻は良い塩梅なので、同じ失敗をしなければ、うまく反りも治るだろうと期待。


先日、盆休みを利用して、神田神保町へ資料探しに行ってきた。
ある程度の日本海軍艦艇関連書籍を持っている方ならご存知の通り、光人社の「写真 日本の軍艦」シリーズは、基本的には雑誌「丸」の日本艦艇特集の各増刊の再録版である。
なので、今まで「写真 日本の軍艦」収録の艦種については、「丸」増刊系の古書はチェックしていなかった。

ところが、ある古書店でたまたま手に取った「季刊 丸 グラフィッククォータリー」1974年1月号の二等駆逐艦のページに、「写真 日本の軍艦」の二等駆逐艦のページには未収録の写真が大量に掲載されている
同巻収録の一等駆逐艦各型については、従来の認識どおり「写真 日本の軍艦」に丸ごと再録されていたので、ちょっと驚いた。

同社の再録方針からすれば、二等駆逐艦も編集の手間を掛けずにそのまま掲載でも良さそうなものだが、読者の反応が余程悪かったのか…。
有名な白塗り時代の「栂」の横方向写真の別アングルなど、現行の出版物にはない写真が沢山掲載されており、勿論、即購入。

学研の歴史群像シリーズなどで続々未発表写真が公開される一方、こうして昔は容易に手に入った写真が人知れず埋もれていく事も有るのだなあと。
戦艦や空母などの花形艦種についてはあまり心配する必要もないのだろうが、一般人だと存在自体知られているか怪しいような、マイナーな補助艦艇、護衛艦艇系は一期一会のつもりで資料を押さえておく必要が有ると痛感させられた。

貧乏人の財布には厳しい話だが、購入を躊躇っている内に絶版になったら元も子もない。
やはり、どんな事でも無闇に先延ばしはいかんのだ

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