工作に着手してから早1年、このままダラダラ弄り続けると、いつまで経っても完成せず、サグラダ・ファミリアか新宿駅かといった事態になりそうだ。
そこで、背水の陣を敷いた。
HN渡来人こと、プロモデラー長徳佳崇氏主催の、「スケールモデル祭り」に参加を申請。
出来の優劣を競うものではないので、求められる条件はただ一つ、「期限までに完成させる」こと。
いざ、出師準備!!
舷外電路
さて、出師準備といえばこれ、みんな大好き (?) 舷外電路である。(強引だなあ)
以前はラインテープやアルミテープを使用して再現していたが、素材の特性上、塗膜強度やスチロール樹脂との接着に難があり、決定版とは言い難かった。
すなわち、不用意に電路を触ってしまうと、塗膜が剥げたり、最悪の場合は接着剤が巧く流れていないとズレてしまうのだ。
これが上構などだと、完成後あまり触ることも無いので問題無い。
だが、如何せん、船体側面を触らずに完成品を持つのは現実的ではなない。
となると、やはり理想的なのはプラモデル用接着剤で溶着できるスチロール系素材だ。
現状、通販も含め、比較的容易に入手できる、最も細く薄いスチロール系素材は、プラストライプの0.14mm×0.5mm平棒かと思う。
しかし、巡洋艦以上はともかく、駆逐艦以下のクラスの舷外電路には太すぎ、舷窓の位置などに干渉してしまう。
となると、同シリーズの一枚物のシートから目分量で切り出すのがベストのような気がする
だが、私の技量上の限界から量産した際の精度に難がある。
今回は、切り出し精度確保の方法として、実験的にデザインナイフの刃を2枚重ねにしてテープで縛り、プラストラクトのシートから切り出してみた。
理屈上は、刃の厚みと等しい幅の帯材が切り出せるはず。
実際には、やはり若干の誤差が出てしまうので、何本か切り出してから精度のよいものを選ぶようになってしまった。
とはいえ、既製品の0.5mmよりは細く、また、完全に目分量で切り出すよりは歩留まりが良いので、今のところはこの方法が最良かなと思う。
また、溶剤系接着剤を付けた状態では柔らかくなるので多少の曲線にも対応できるのも良い。
光線の加減で判り辛いが、電路は概ね0.3-0.4mm位の太さ。
「樅型」~「若竹型」で舷外電路が確認できる写真は少なく、手元にあったのは1941年 (昭和16年) の「蓮」、1942年 (昭和17年) の「芙蓉」と、1945年 (昭和20年) の「蓮」のみである。
いずれの写真も光の加減で全ての経路はわからないが、あまり特徴的な箇所は無く、以下の3点くらいを押さえておけば、それらしく見えると思う。
- 艦首アンカーレセスの上を通るあたりで、その形状に合わせて若干山型にカーブしている
- 船首楼後端の舷窓のすぐ前を通って上甲板の高さまで降りる
- 船首楼側の折れ曲がりは直線的、上甲板レベルでの折れ曲がりは弧を描いている。
舷窓
舷窓は、以前の記事で触れたとおり、「樅型」「蔦型」「若竹型」で全て異なり、しかも左右非対称である。
キットの舷窓モールドは、全長間違いの所為で辻褄が合わなくなったのか、「樅型」の右舷に近いが、若干数が少ない。
また、左舷側も同じ配置となってしまっている。
いつもの「若竹型」の「芙蓉」公式図を元に、各型の相違点を反映させる形で舷窓の位置を推定した。
ただ、左舷側の公式図は入手できなかったため、甲板上の装備品や右舷側の位置から割り出すしかなく、あまり自信が無い。
また、理由は不明だが、「栗」のみ、他の「樅型」より左舷下段前端に舷窓が一つ多いので注意が必要だ。
後半部分は割と単純だが、前半はシアー部分への開口になるうえ、間隔がマチマチでしかも左右舷非対称なので、結構大変。
後半部分は「樅型」と同一、前半部分は左右舷ともかなり「樅型」と相違がある。
工作の際の位置決めだが、前部は船首楼上段後端、後部は3番砲座支柱の前半直下にあるものを最初に開けると、位置取りがしやすい。
舷窓の大きさは、森恒英氏の「日本の駆逐艦」のによると、用途により直径200mmまたは250mmとなっているので、0.3mmで開口した。
電路、舷窓とも手間と時間は矢鱈掛かるくせに、文章に起こすと、さしたる分量にもならないのが悔しいところ (笑)
錨と錨甲板
主錨は、先日副錨用に買ったものの、使わず仕舞いになってしまった、ナノドレッドの駆逐艦用主錨を使用。
これまた全長間違いの影響故か、キットのアンカーレセスのモールド (というか、タダのケガキ線だが) は艦首前端基準で1mm弱前よりである。
本物のアンカーレセスは、マンガのウサギの顔のような、主錨にぴったり一致した複雑な形状だが、サイズが小さく再現が大変なので、適当に簡略化してピンバイスで彫り込んだ。
主錨をはめ込むとそれなりに密度感が出るので、簡略化したアンカーレセスでもあまり目立たない……はず (弱気)
ナノドレッドの主錨は厚み方向にメリハリのある彫刻なので、結構深く掘りこまないとアンカーレセスに内に収まらない。
錨鎖はminekaze1920氏が使っているエアコンダクト配管用PVCテープを試してみた。 氏が紹介していたものと全く同じものが入手できなかったので、いささか不安だが、表面に微細な菱形の網目が凸モールドされたテープで、これを菱形一つ分の幅に切り出すと、鎖に見えるというもの……だと思う (またしても弱気)
伸縮性が高い素材のため、切り出す際に力を入れすぎるとすぐよれてしまう。
よく切れるナイフの刃で力を掛けずに切るのがコツのようだ。
接着はスチロール樹脂用接着剤が効かないが、瞬間接着剤で問題なく固定できる。
錨鎖にうまくピントが合ってないが……
ボラードや吸排気筒の処理は、前回の艦尾工作と同様なので割愛。
実はもう少し工作が進んでいるのだが、あまり記事の作成を優先してしまうと〆切を落としてしまうので、とりあえず今回はここまで。
向こう数日、まさに天佑というべき空梅雨が続くようなので、前線が戻ってくる前に、一気呵成に塗りまで進めたい。
春園燕雀さま、ご無沙汰しております。
舷外電路作成のくだり、私も以前同様に考えて0.14mm厚プラシートの細切りで再現したことがあります。
デザインナイフのような引いて切断する工具ですと、切った部材が反ったり、切断部のエッジの“まくれ”が気になりました。
そこで、私は以前から「OLFA 別たち」という裁断用ナイフを用いてプラシートの細切り(0.3mm幅程度)を量産しています。
これで上から押し切る(結構力が要ります)と、部材が反り返ったりエッジがまくれたりしませんので、個人的におすすめの工具です。
そういえば、今年になってタミヤさんからプラペーパーが再販されたことをご存知ですか?
厚さが0.1mmと0.2mmの2種類で、厳密に言うと旧製品の厚さ0.14mmと0.27mmとは違うようですが…。
あと、拙ブログの記事をリンクしていただき恐縮です。
このPVCテープを切断する際にも、上記の裁断用ナイフが有効です。
よれたりせず、サクッと切れますよ。
それにしても、模型の細部工作も凄いですが、岩重氏ばりの詳細な舷窓配置図面が素晴らしいです。
多くの旧海軍艦艇は舷窓位置が左右非対称ですが、この違いを再現したキットは少ないですね。
minekaze1920 さま
コメントの反映や返信など、大変遅れてしまい申し訳ありません。
「OLFA 別たち」を早速ググってみましたが、便利そうですね、これ。
今度買い出しに行った際に探してみます。
実は、模型雑誌を殆ど買っていないので、恥ずかしながらプラペーパーの件は初耳でした。
プラストライプに比べて折り曲げ耐性や溶剤耐性の違いなどが気になるところです。
プラストライプは曲面を出そうとすると意外に割れるので、この辺りで上手く共存できる物性だといいなと期待。
舷窓は、大抵公式図の一般艤装図レベルだと右舷のみしかないので、資料の少ない艦の左舷は右舷の反転になりがちですよね。
噂では、呉の大和ミュージアムに結構な数の公式図面が眠っているらしいですが、そのためにン万円掛けて出張するのもなんだかなあと思うので、アジ歴辺りに移管されないものかとひそかに願ってみたり。
今回の図は岩重氏の図解の作法を容赦なくパクリました。
多分、例の駆逐艦本を見ていなければ、数値を入れない図で適当にお茶を濁していたところでしょう (笑)