キャノピーの内部窓枠を研ぎ出しで再現 – 1/72でJu 87 B「スツーカ」をつくる: 10

Ju 87をはじめとするWW2初期独軍機の特徴の一つに、風防やキャノピーのガラス面の内外に混在した窓枠がある。

内枠の再現については、クリアパーツの内側から塗装やデカールで再現するのが一般的だが、1/72クラスともなるとパーツの厚みのせいで上から覗き込んだ時など不自然になってしまう。そこで、クリアコートと研ぎ出しによる内枠の再現を試みた。


6./Stg. 77所属の Ju 87 B-1後期型またはB-2前期型 後部キャノピーの側面、横方向の枠がガラス外側にあり、縦と斜めの枠が内側にあるのが判るだろうか。[1]

研ぎ出しとは、カーモデルを中心に行われている技法で、デカールや塗り分け線の段差を消すのに用いられる。
本来の塗膜やデカールの上からクリアを厚吹きし、下の塗膜を傷つけないようにクリア層だけをペーパーで削って段差を均し、表面を平滑に仕上げるというもの。
要は、クリア層の中に段差を埋め込んでしまうわけだ。

内枠の再現

まずは、元の窓枠モールドを削り落としたキャノピーの表側に内枠をデカールで再現する。
その上からクリアを重ね塗りし、十分に乾燥させてから平滑に磨く。普通なら1000番台のペーパーを使うのだが、今回はだごれっど氏に勧めていただいたウェーブのヤスリスティックの仕上げ目 (フィニッシュ) を使ってみた。

所謂スポンジ当て木付きのヤスリで、曲面追従性に優れ、目詰まりも起こし辛く、キャノピーの様な曲面主体のパーツをカドを立てずに磨くのには相性が良い。
ヤスリで段差を落とした後はコンパウンドで仕上げを行うが、私は光沢仕上げが下手なのでコンパウンドだけでは元の透明度に至らず、ひと通り磨いたのち、クリアをエアブラシしてやっと元通りになった。

内枠の上からクリアコートして研ぎ出した、1/72 Ju 87 Bのキャノピー 下手糞なので完全に平滑にはできなかったが、表面にガラス感は出たと思う。

ここまでの状態で光にかざすと、クリア層の中に内枠が埋もれた状態となり、疑似的に「ガラス面の向こう側にある内枠」を再現しているという塩梅だ。

外枠の再現

次に外枠、これは普通にマスキングして塗っても良いのだが、内枠との差を強調したいので、以前の「強風」で試した透明ラベルシール法で再現する。
これは、樹脂製の透明ラベルシールに内部色→外面色と重ね塗りすることで、ガラス越しに見える内側が内部色に見え、また、接着剤のはみ出しも起こらないという、一見良いことづくめの方法だが、普通の接着剤に比べると強度に劣るのが難。

特にライン状に貼ると端から剥がれやすいので、端が浮いてきたらGボンドクリアで補強すると良い。
下端部以外の細い窓枠は、写真から割り出すと概ね0.3mm幅くらいで、あまり強い曲面に貼ると糊が弾力に負けてしまう。また端もめくれやすいので、要所に接着補強は欠かせない。
キットは後席キャノピーの分割線が誤っており、実際にはもっと後ろに設ける。また、席間の固定部分の段差も大きすぎるので、席間キャノピー下端を0.5mmほどプラ板で延長。延長部は下枠で隠れてしまうので、非透明材でも問題ない。

キットの元の窓枠モールドの位置はかなりいい加減なので、写真から位置を割り出した。
具体的な寸法は以下の通り。

1/72 Ju 87 Bの風防・キャノピー枠の位置 厳密には異なる部分もあるが、前席後ろの斜め部分の位置を変えると大変なので、そこを基準に辻褄合わせ。

キャノピー後端の「尻尾」や下端の幅広の枠部分は、機体ラインとの削り合わせが必要なのでプラペーパーを併用した。
キットのキャノピーは尻尾の先端の平坦部がやや短いので、併せて1mmほど長くする

問題なのはアンテナ支柱で、キットでは後席キャノピーに取り付け穴があるが、実際には席間の固定キャノピー後端にある。取り付け穴の場所には窓枠がつくが、0.3mm幅では穴が隠せないので、已む無くやや太めの0.5mm幅の枠で穴を隠した。

本来の取り付け穴と、その前からスライドしてくる操縦席天面はいずれも金属板で塞がれているが、図面は書籍によって寸法がまちまちなので、写真で全体の横幅や側面窓枠との位置関係から寸法を割り出した。
アンテナが生えている部分の金属部が恐らく4mm幅、前席天面の方が2mm幅位だと思う。

透明ラベルとプラペーパーで外枠を再現した、1/72 Ju 87 Bのキャノピー 外枠は黒っぽいところがラベルシールで、ライトグレーがプラペーパー。並べてみると、前述の尻尾の延長がよく判ると思う。

また、キットでは省かれているが、前席天面の金属部は後端に1段の段落ちがある。
ここは、前席を空けた際にアンテナ支柱を逃がすための切り込みで、中にバネが仕込んであって段落ちの中が引っ込む仕組みである。これは先の全幅2mmを正とすれば1mm幅位の切欠きである。


と云った訳で、内枠の再現を試みてみたのだが、私の技術の拙さもあり効果のほどは微妙。
ここまで手間暇かけずとも、内枠塗装→クリアコート→研ぎ出しなしで外枠塗装、でも大して変わらなかったかもしれない。ご覧の通り、窓枠が細くなるだけで随分と精密感が増すのだ。
今回はアイデア倒れである。

イタレリ 1/72 Ju 87 Bのキャノピー枠加工前後の比較 ここまで凝らずとも、ただの塗装表現で窓枠を細く再現するだけでも化けると思う。


参考ウェブサイト

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