レーダーアンテナに敢えてエッチングを使わない、と云う選択 – 1/700でKGV級戦艦プリンス・オブ・ウェールズをつくる: 8

高角砲や対空機銃の管制に使われる対空レーダー、フライホークの「プリンス・オブ・ウェールズ 豪華版」にはエッチング製のアンテナが付属している。
これをそのまま組めば、手軽に精密でスケール感に見合うレーダーアンテナが再現できる……と思いきやさにあらず。


HACS Mark IV高射装置上の285型レーダー、キットのパーツは些か大きく高射装置とのバランス感がおかしい。組みやすさを鑑みたアレンジかと思いきや、ポンポン砲管制器上にある更に小さい282型レーダーは妥当なサイズ……どうやらただの設計ミスのようだ。
だが幸い、豪華版キットには、285型・282型共にエッチングパーツが用意されている。

285型レーダーはサイズ感を重視し、自作する

しかしこのエッチングパーツが曲者で、柔らかい真鍮製かつ繊細な造形の為、私の技量では手に負えない。各素子の四角錐の先端がズレぬよう曲げ位置を何度か調整している裡、簡単に折り目が割れてしまうのだ。また、四角錐部分も細すぎて、ピンセットで微調整しようとすると三角形の辺の真ん中あたりですぐに曲がってしまう。
まあこれは、純粋に技術不足の問題なので、キットの欠点と呼ぶには当たらない。だが、問題は他にある。何故かエッチングパーツは小さすぎるのだ。単体では気にならないが、直下にあるHACSの円形台座とのバランスが明らかに実物と異なり違和感がある。後掲の写真の様に、実際の285型はHACSの円形台座よりアンテナ1基分ほどはみ出すのだが、何故かエッチングパーツの横幅は台座より狭いのだ。

フライホーク「プリンス・オブ・ウェールズ」285型レーダーの自作プラパーツの方とのサイズ比較写真撮り忘れてた……。

「プリンス・オブ・ウェールズ」1941年4月実物との比較。レーダーの寸法が判る資料が無く、KGVの公式図面にもレーダーは描かれていないため、写真から寸法を割り出した。

いずれにせよ、前述の組みにくさの所為で4基中3基のエッチングを御釈迦にしているため、自作は不可避である。キットの282型のようにプラ材を四角錐に削り出すのが正攻法だが、少し中が抜けてる感を出したいので変化球を使う。

平面形に切り出した0.14mmプラ板の上に側面形に切り出した0.14mmプラ板を立てる。正面から見ると逆Tの字である。
全体形としては三角錐となってしまうため不正確なのだが、凹部に影が落ちる為、ただ四角錐を削り出すより骨組みっぽさが出る。

フライホーク「プリンス・オブ・ウェールズ」艦橋付近色がつくとこんな感じ。正しく四角錐の282型レーダーに較べるとエッジが強調され、抜けてないのに抜けてる風に見えると思う。

レーダーの支持架は、同型艦の「デューク・オブ・ヨーク」に見られるような細い棒材として表現されているが、「プリンス・オブ・ウェールズ」のそれは板状なのでプラ板細工で再現する。

フライホーク「プリンス・オブ・ウェールズ」285型レーダー組立図エッチングパーツの組み立て説明書より。形は「デューク・オブ・ヨーク」準拠?

「プリンス・オブ・ウェールズ」1941年8月1941年8月の撮影だが、恐らく5月も同様の筈。

フライホーク「プリンス・オブ・ウェールズ」285型レーダー基部の自作構造的に多少省略したが、シルエットとしてはこんなものだろう。

282型レーダーはプラパーツをベースに細部を煮詰める

前述の通り、ポンポン砲管制器上の282型レーダーはプラパーツがジャストサイズなので、これをベースにブラッシュアップする。

「プリンス・オブ・ウェールズ」1941年4月こんな鮮明な写真が山ほどネット上で公開されてるのが英国艦の良いところ。

フライホーク「プリンス・オブ・ウェールズ」282型レーダーの加工四角錐の各面を立てるようにシャープに削り、左右を繋ぐゲート上の部分は実物に無いのでカット。

フライホーク「プリンス・オブ・ウェールズ」282型レーダーの加工後端は側面形が円弧になっているので削り込む。

フライホーク「プリンス・オブ・ウェールズ」艦橋付近無垢っぽさを消すため、船体色の上から全体にエナメルで影色を塗り、エッジ部だけ溶剤で落としてフレーム風に見せかける。


普段、私が「●●専用エッチングパーツセット」みたいなのを使わず、汎用のメッシュなどを加工して使うのは今回のようなケースを避けるがためなのである。
一発勝負でちゃんと加工できる人なら専用品の方が便利で安上がりなのだが、初手で失敗がデフォの私のような人間だと「一か所失敗したらもう一セット買いなおし」となる専用品はかなり割高な買い物となってしまう。

欲を云えば、せめて今回のレーダーのような、壊れやすいパーツだけでも一つ二つ予備を入れてくれればありがたいのだが……と思ったのだが、結局4基中3基失敗してる時点で、そもそもこの豪華版キットを組むための技量に達していないことに思い至るべきだ私。


写真引用元

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